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天狗多聞天になった小太郎〜天狗参上

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天狗伝説

 天狗は,天狗倒し(山中で大木を切り倒す音がするが行ってみると何事もない),天狗笑い(山中でおおぜいの人の声や高笑いする声が聞こえる),天狗つぶて(大小の石がどこからともなくバラバラと飛んでくる),天狗ゆすり(夜,山小屋などがゆさゆさと揺れる),天狗火,天狗の太鼓などさまざまな怪異を働くが,こうした怪音,怪火の現象は山の神などの神意のあらわれと信じられ,山小屋の向きを変えたり,山の神をまつって仕事を休んだりした。


天狗多聞天になった小太郎

 静岡県掛川市と袋井市にまたがる小笠山では『天狗囃子』と呼ばれる不思議な現象があり、何もない山から「ピ、ピ、ピ、ピーヒョロ、ピーヒョロ」とお祭りのお囃子の音が聞こえてくるというのです。
 小笠山の最も標高の高い地点には小笠山の守護神である天狗多聞天(たもんてん)が祀られています。
 ここには、こんな悲しい物語がありました。

 昔、芝村(現在の浅羽)の庄屋、河村平馬の子どもに小太郎という少年がおりました。小太郎は小さい頃から笛が大変上手で、見えないかと思うと木に登って笛を吹いていました。
 小太郎の笛は、近隣の村々にも大変人気で、頼まれては笛を吹きに出かけていたのでした。

 そんな小太郎が突然、姿を消してしまったのです。
 小太郎は「小笠山の天狗・三広坊は笛が好き」という話を前から聞いていて、信心深い小太郎は、三広坊の神前に笛を奉納したいと思い、誰にも告げずに、小笠山に分け入ったのでした。

 小太郎は、頂上の拝殿にたどり着くや、神前で笛を吹き始めました。なんとももの悲しい小太郎の笛の音が山に響き渡ると、何と拝殿の中から天狗の三広坊が姿を現しました。

 そして「お前は本当に笛がうまい。もっと聞きたいので、今から天狗になって、この小笠山に一生、住む気はないか」と問いました。

 「天狗は死なない」と聞いていた小太郎は、永遠に笛が吹けるのであれば、天狗になってもいいと思うのでした。
 しかし、両親には、何も告げすに山に来ているので、「ひとまず家に帰り、両親と相談したい」と天狗に告げました。

 しかし、天狗は「いや、両親は許してくれないだろう。ならば、この拝殿に7日の間こもって修業に励め」というのでした。

 三広坊に強く勧められた小太郎は、思い切って天狗になる覚悟を決めるのでした。
 7日間修業に励んだのち、山の中でさらにつらい修業にも臨みました。
 気が付くと7日のつもりが、もう数年たっているのでした。そして、三広坊から認められ、「天狗多聞天」の名をもらうことができました。

 一方、小太郎の両親は、何年経っても家に帰ってこない息子を心配していました。
 天狗隠しにあったのではと悲しい思いで何年もたっているのでした。そんなある夜、父親の平馬の夢枕に天狗が現れました。その姿を見た平馬は驚きました。それはなんと小太郎でした。

 小太郎は天狗になった経緯を父親に話し、こうお願いしました。

 「お父様、私は病気やケガで苦しんでいる人を助けたいので、小笠山の山中に神社を建てていただけないでしょうか」

 次の日、平馬は家族や近所の人たちに昨夜見た夢の話をしました。そして平馬は大勢の人たちと小笠山にこもり、三広坊本堂の西に多聞天神社を建てました。

 その後、村に病人が出ると多聞天が夢に現れ、薬の作り方や傷の治し方を教え、大勢の人を救ったといわれています。

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