大月桃太郎のこぼれ話



桃太郎は桃から生まれない

 おばあさんが川で拾ってきた桃から玉のようなような男の子が生まれてくる。
 彼はすくすく好青年に成長して、村人をいじめる鬼を退治するために鬼ヶ島に旅立つ。
 道中、犬・サル・キジをお供にして島に乗り込み、鬼を征伐して財宝をもらって帰ってくる。めでたしめでたし。

 「桃から生まれたから桃太郎」というのは誰でも知っているお話です。

 しかし、実はそのように言われ始めたのは明治後半以降のことなのです。

 それまでは「川から流れてきた桃を食べたおじいさんとおばあさんは若返り、その2人の間に誕生した男の子が桃太郎」とされていたのです。
 なぜ若返ったのかと言うとそれは桃という果実には不老長寿や若返りの効果があると古くから信じられていたためだと考えられます。

 ただ、そういう話のまま明治20年(1887年)、小学生用教科書「尋常小学讀本」に採用してしまうと、問題が起こったのでした。
 つまり、児童から「どうして若返ると子供が産まれるの」といったような質問が相次いだのです。
 その質問に教師達は返答に困り、「男女の関係というのは教育によくない」、「子どもが読むものとしては内容が大人すぎるのではないか」という配慮から現在のような話に改変されたようです。

 なぜ若返りの果物が梨や柿などでなく桃なのかというと、前述のように桃には不老長寿や若返りの効果があるからということですが、そのほかにも、桃の形はまさに女性のお尻そのものであり、みずみずしく生命力に溢れているからという説があります。
 確かにそれも含めて子供に説明するのは、いささか刺激的ですね。ま、中学生や高校生くらいならそれなりに盛り上げるかもしれませんが。

 結局、「小さな子供が大柄の鬼を退治しに行く」という行為も「小さな日本が大国を打ち倒す」という構図と重なり、当時の富国強兵教育のために教科書に載せ、そして変更された教科書のお話があたかも昔からあった童話として広まったようです