朝鮮渡来人説



 「郡内の研究」によると、朝鮮渡来人説があげられていました。おおまかには以下のとおりです。

 日本に渡ってきた朝鮮人たちは優れた鉄精錬技術を持ち全国いろいろな鉱山で鉄を扱っていました。
岩殿山 秦氏と呼ばれる一派はその一つで、大月近辺に”ハタ”のつく地名がいくつかあり、岩殿山近辺には鉱山がありました。
 岡山始め桃太郎・鬼伝説のあるところには”鉄”があるので、岩殿山にも古代朝鮮人が住み付き、鉄を扱っていたと考えられます。 

 山に住み、屈強な身体で鉄を掘り、加工して武器を作る。弱い村人を威圧するに十分であることから、鬼のモデルは鉄精錬に優れ岩殿山に住みついた朝鮮渡来人であるとする説もあります。

 ちなみに甲州街道郡内周辺には、「丸」 と名の付く山が多いのです。白谷丸、大蔵高丸、破魔射場丸、大谷ヶ丸、コンドウ丸、本社ヶ丸、大丸。どうやら「丸」 というのは朝鮮語で「高いところ」すなわち山のことを意味するとのことです。

岩殿山の鬼 ところで、なお、岩殿山の赤鬼は、はじめ、九鬼山(都留市では鬼退治の舞台として伝わる)に青鬼9匹と暮らしていたが、破天荒な性格と肌の色の違いが仇となって仲間はずれにあい、岩殿山に移り棲んだとされています。
 岩殿山の鬼は赤鬼ですが、なぜ岩殿山が赤鬼で、九鬼山が青鬼に分かれたかというと、岩殿山では鉄が取れ、九鬼山周辺では銅が取れるからとする説があります。
 渡来朝鮮鉱山士達の中でいざこざが起き、「鉄」精錬士達は岩殿山で赤さびにまみれ、「銅」精錬士たちは九鬼山で青さびにまみれて精錬に勤しんだというのです。

 桃太郎が退治した鬼のモデルは渡来朝鮮の鉄精錬士であり、この荒ぶれる者達が葛野の村人に乱暴した。
 その暴虐無人ぶりは目に余るものであるが、弱い村人達にはどうにもならなかった。
 娘は取り上げられ、息子は武闘の相手に狩り出された。
 精錬した鉄で新しい武器ができれば試し切りもした。
 村人にとっては、倒そうにも倒せる相手ではなかった。
 村人の中には、思い余って生まれたばかりの男児を水のもれない箱に入れ、葛野川に流し、下流の平和な村で無事育つこと願う者も現れた。
 そしてその中の一人が桃太郎であり、成長して鬼退治に出かけたということです。

 鬼は外国人だったというのは昔から議論されてきました。
 岡山の桃太郎伝説で鬼として恐れられていた「温羅」ですが、彼は、鬼ではなくて、朝鮮百済(くだら)の王子で、吉備へとやってきて一帯を支配した一大勢力の首領という話でした。
 身丈は1丈4尺(約4.2メートル)もあり、頭髪は燃えるように赤く、眼は虎狼のごとき鋭さであったことから「鬼」とされたのです。
 しかしながら、現在の研究では、温羅は鍛冶師(金属を加工する技術師)だったのではないか、朝鮮半島から渡ってきた鍛冶師たちが鬼ノ城に住み、製鉄していたのではないかとされています。

 従来は「鬼」=「悪者」として扱われてきましたが、いまでは、製鉄などの技術を伝え、吉備津彦と共に吉備の国の発展に貢献した人物として認知されてきているようです。
 大月の鬼もやはり朝鮮からの渡来人であった可能性も大きいでしょう。