香川県高松市



 稚武彦命(わかたけひこのみこと)が瀬戸内海地方の平定のため兄の吉備津彦命とともに朝廷から派遣されてきました。
桃太郎
 兄は中国地方の平定に向かい,弟が瀬戸内海一帯の平定を任されることになりました。

 ある時,稚武彦命は姉の倭迹迹日百襲姫命に会うため河口から船に乗って本津川を上ってきました。
 そのとき,川で洗濯をしている美しい娘に一目惚れをしてしまい,娘の家に婿養子に入ります。
 ところがこの娘は鬼から逃れてこの村で暮らしていたのです。
 鬼とは讃岐の海を荒らしていた「鬼大王」とも呼ばれた海賊のことです。
 村人たちを苦しめる鬼のことを知った稚武彦命は 村人や娘たちを救うために鬼退治に出かけることにしました。

 稚武彦命には近くの村や島の人たちが援軍として参加しました。
 なかでも「猿王」は香川県綾歌郡の人で陶芸を職としていますから火を扱うことを得意としています。
 瀬戸内海の「犬島」(岡山県岡山市)の人たちは船を扱うことに秀でています。
 「雉子谷」(かしがだに)の人たちは山野を駆けめぐり弓矢を得意としています。

 稚武彦命はおばあさんが作ってくれたきび団子を持って、鬼を退治しました。
 
 その後,村には鬼がいなくなり平和を取り戻すことができたのですが、鬼が住んでいたのが女木島で、桃太郎が鬼を退治して鬼がいなくなったことから「鬼無」という地名になったと伝わっています。

 大正3年に男木島出身の橋本仙太郎氏が、女木島に「洞窟」を発見したことによって、桃太郎伝説と女木島が結びつき、以来、女木島は「鬼ヶ島」と呼ばれるようになりました。
 なお、桃太郎伝説に出てくるこの洞窟は、女木島の中央、鷲ヶ峰の中腹にあります。広さは4,000㎡、奥行きは400mにも及ぶ大きなものです。内部には、鬼の大広間、拐した人を閉じ込めた監禁室、鬼の番人の控室などが再現されています。

 なお、ここには別に桃太郎が女の子だった、とする話も伝わっています。
 それは、おばあさんが川から持ち帰った桃を食べ、若返ったおじいさんとおばあさんに子どもができ、男の子のように元気のいい女の子が生まれる。
 そして、あまりに可愛いので鬼にさらわれないよう桃太郎と名づけ育てた、というものでした。